患者さんに喜ばれる医療用弾性ストッキングとは
お茶の水血管外科クリニック 看護師/下川 千佐子 さん
梅田血管外科クリニック 看護師/仲川 眞弓 さん
長崎血管外科クリニック 看護師/長田 美雪 さん
杏嶺会 一宮西病院 看護師/佐藤 理乃 さん
監修:松本 康久 先生(まつもとデイクリニック 院長)
ここ数年で、下肢静脈瘤治療における、医療用弾性ストッキングのあり方が見直されてきています。今回は、弾性ストッキングコンダクター資格を取得している看護師4名にお集まりいただき、日頃どのようにして弾性ストッキングを選んでいるのか。「レッグサイエンス舞」のどんな点が患者さんに喜ばれているのかなどについてうかがいました。
弾性ストッキングコンダクターの役割
下川まずは、弾性ストッキングコンダクターとしての活動を教えてください。私自身は、下肢静脈瘤の専門クリニックに勤務しています。先生方が「ストッキング専門の看護師によく聞いてください」と患者さんに紹介してくれるので、資格を持っていると患者さんが指導を受け入れやすくなるのを感じます。
佐藤総合病院の心臓血管外科外来に勤務しています。週に2回静脈瘤外来があり、弾性ストッキングコンダクター2名が患者さんの対応にあたっています。
長田静脈瘤の専門クリニックに勤務しています。弾性ストッキングコンダクターは私ひとりです。資格証を院内に掲示してあるので、患者さんから質問されることもあります。
仲川弾性ストッキングコンダクターの資格を取得後、リンパ浮腫のセラピスト資格も取得しました。院内で患者さんに弾性ストッキングの説明や指導を行うほか、地域において地元の方々に説明する機会も増えてきました。
医療用弾性ストッキングの選び方
下川弾性ストッキングの選び方について教えてください。
仲川肌が敏感でかぶれやすい方、静脈瘤はないけれどむくみのある方、高齢者で力が弱くてはきづらい方など、患者さんのタイプによって適切なものを選ぶようにしています。
長田いくつか試着してもらいます。在庫がない場合は注文で取り寄せます。
佐藤メインは「レッグサイエンス舞」です。ちょうど患者さんの身長や体型などに合わせやすくお勧めしやすいからです。
下川タイプごとにある程度ルールはつくっておいて、状況と患者さんの体型によって柔軟に対応しています。ストッキングの圧迫圧は、先生が指示を出すのですか。
佐藤基本医師の指示のもと弾スト指導を行っています。圧についても、基本中圧で少し高齢なら弱圧にしてみようか等の指示があり、あとは看護師に任せてもらっています。
長田基本は中圧で、高齢の方は弱圧です。
下川高齢の患者さんが増えていますが、みなさん弱圧をお勧めしていますか。
仲川中圧がはけない方には、弱圧をすすめます。はかないよりは、そのほうがいいので。
レッグサイエンス「舞」をおすすめする理由
下川「レッグサイエンス舞」(以下LS舞)の使用感はいかがですか。
仲川最近は高齢の患者さんが増えているので、管理がしやすくてはきやすいことが大切です。「LS舞」は、なんといっても丈感がちょうどいいですね。小柄でぽっちゃり体型の人にも長すぎず、ちょうどいい丈です。
下川同感です。「LS舞」は丈が若干短めですから、背が低くふっくらした方にはすごく使いやすい。患者さんはぐいっと伸ばして弾性ストッキングをはくので、どうしてもひざ下にシワがたまって使用感が悪いことが多い。「LS舞」はちょうどよい丈感なので、シワが寄って困るという苦情は減りました。
佐藤ずり下がりも、少ないです。
下川履き方については、上げすぎないように指導しています。特に大腿部丈のものは縦によく伸びるので、患者さんはついつい引っ張りすぎてしまいます。「この位置まで」と目安を示すと、ずり下がりも軽減します。
仲川口ゴム幅も大切です。高齢の方はひざ下がむくむ人が多いので、口ゴム幅が細いとつぼ型にぼこっとむくんでしまいますが「LS舞」のハイソックスタイプは口ゴムの幅が少し狭いのでもう少し広い方が良いと思います。
下川大腿部丈の方は、口ゴム幅はかなり幅広で、すべり止め加工もしてあるで、止める位置さえ守ればずれないように思います。すべり止めがポリウレタンというのもいいですね。
長田力がなくてはけないという高齢の方へのはき方指導はどのようにしていますか。
下川私は「LS舞」を第一選択でお勧めしていますが、ひっくり返さないで、そのままはくように指導しています。はけないときは、ゴム手袋を使うと案外スムーズに上げられます。
仲川ゴム手袋ですか。ひっくり返さなくてもはけるのなら、それは良い提案ですね。高齢の方は、上に引っ張り上げる力はあっても、ひっくり返して生地が二重になった部分を横に広げることが難しいので。
下川素材や色味についてはいかがでしょうか。
長田肌ざわりは「LS舞」が一番いいと思います。若い方は黒、高齢の方はベージュを好みます。制服などによっては白を指定で購入される方もいます。
佐藤私自身も黒とベージュを半々で10本くらい使い回しています。肌ざわりは本当にいいです。
仲川私もベージュをずっとはいています。「LS舞」のベージュは、日本人の肌になじみやすい色だと思います。その他、私が気に入っている点は、つま先のあるタイプでも、つまり感がなくつま先が痛くなりにくいことです。足首の締め付け感もないので、足首部分にシワができて痛いということもありません。
下川履いた時の光沢感や色味がとてもよく、色にこだわりのある患者さんには特にお勧めします。これまでは、かゆみの相談が多くあったのですが、「LS舞」を購入された患者さんからはクレームがありません。肌の弱い方、かぶれやすい方も、肌にやさしいことを実感されています。また「日本製」「グンゼ製」という説明をすると、圧倒的な信頼感があるようで、患者さんにすんなりと受け入れてもらえます。
佐藤説明の仕方も重要ですね。患者さんに継続して履いていただくことが大事ですからね。
「レッグサイエンス舞」これからの可能性
下川「LS舞」について要望はありますか。
佐藤高齢者向けに15~20mmHgの弱圧があったらいいと思います。
仲川中圧がはけない人でも、弱圧ならはけることがあります。何もはかないよりは、弱圧でもはいていたほうがいいので、生地を薄くしてはきやすさを重視した弱圧の製品をつくっていただきたいです。それと、リンパ浮腫の初期の患者さん向けに、今のままでもよいのですが、もう少し圧の強めの中圧が欲しいです。
下川サイズ的には、一見小さめに見えますが、Sでも足のサイズが25~26cmまで、Mなら27cmまで対応できます。欲を言えば、最近は高齢の患者さんに大柄で肥満体型の方が増えてきたので、LLサイズや、男性や背の高い人用にロング丈があると対応の幅が広がると思います。
仲川足が細い人用にSSサイズもほしいです。
長田以前、小児の患者さんがいて、小児用の弾性ストッキングを探しましたがありませんでした。SSサイズが小児に使えるとよいと思います。
下川本日はいろいろなご意見をありがとうございました。これからも「LS舞」をはじめ、医療用弾性ストッキングが患者さんの治療に役立つよう、私たちもサポートしていきましょう。
※記事中のコメントは個人の見解です
[監修 松本先生より]
医療法人静かな凛脈の会 まつもとデイクリニック 院長松本康久
医療用弾性ストッキングは下肢静脈瘤・リンパ浮腫診療において必須となる治療用具である。適切使用のためには、装着前指導のみならず指導後個別フォローアップが重要だと思われる。さて、今回の座談会で本製品が優れている点としてずり下がりが少ないということを挙げていたことが注目される。従来のものは膝下特に足首あたりに食い込みが生じやすく、これによる痛み等が問題であったが、本製品においてはほぼ解決されている。一方で、その構造や生地の性状から装着開始時の折り返しが形成しにくい。そのためゴム手袋を使用し折り返しを形成せず装着するという方法は興味深い。本製品の最大の特徴は下着メーカーのノウハウを生かし、日本という高湿度環境にも関わらず上位の滑り止め部分のアレルギー性皮膚炎の発生が極めて少ないことであるが、患者の大腿部の形態によっては生地が丸まり落ちてくるという訴えが多いと感じるので改善を期待したい。